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東京高等裁判所 昭和24年(新を)3675号 判決 1950年7月27日

被告人

石黒貞三郎

主文

原判決を破棄する。

被告人を懲役八月及び罰金四千円に処する。

右罰金を完納することができないときは金百円を壱日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

但し本裁判確定の日から参年間右懲役刑の執行を猶予する。

押収してある現金九百九拾四円七拾五錢を沒収する。

原審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

弁護人岡崎一治の控訴趣意第一点について。

原判決が換価代金預入証明書(昭和二十四年押第九一七号)を証拠として挙示援用していることは、所論の如くであるが、右証明書が東京地方検察庁検察官事務取扱副検事倉林寅二及び同庁歳入歳出外現金出納官吏検察事務官田沼栄太郎の作成に係る書面であることは、その各証明事項の末尾に同人等の右官職、記名捺印の存することにより明らかであり、倉林副検事は本件の現金九百九十四円七十五錢は、被告人石黒が本被告事件の証拠物として提出し、司法警察員が領置した証拠物たる精米三十瓩を換価した代金であることを証明する旨及び歳入歳出外現金出納官吏田沼検察事務官は、右現金を保管金として昭和二十四年五月十三日、日本銀行に預入したことを証明する旨の各記載があるのであつて、これらによれば預入者は東京地方検察廳歳入歳出外現金出納官であり、預り人は日本銀行であること明らかであり、公務員が職務上証明することができる事実について、その公務員が作成した書面に該当し、かくの如き種類の書面が刑事訴訟法証拠能力のあることは、刑事訴訟法第三百二十三条に徴し固より明白であるから論旨は理由がない。

同第三点について、

しかし原判決の挙示する標目の証拠によれば、被告人が所持していた精米中一斗六升は判示、谷口こと金小守に一升、二百三十五円で販売する目的を以て所持していたこと、及び右被告人の販売が営利の目的に出ずるものであることは、優にこれを認めることができる。所論は物価統制令第十三条の二の所謂「取引する目的」とは單に内心的心理決定では足らず、外部的行動に表現せられるに至らなければならないというにあるけれども、本条制定の趣旨は同令第三条の契約に至らない予備、未遂の段階においても、これを取り締ろうとするにあることを考えれば論旨は到底採用できないから理由がない。

(本件は量刑不当により破棄自判)

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